■感想など■

2009年05月25日

第4章「トモダチ」

■■【5】■■
 圭介を部屋に通すのは、小学校以来だった。
 由香は慌てて「だめっ!」と言いかけて思い直し、「ちょっと待ってて」と言ってケータイを切った。それから玄関に行こうと部屋のドアを開けてから、下着の中が濡れている事に気付いて真っ赤になり、クローゼットから下着を取り出して、そして立ち上がったところで思い直して今度はとっておきの可愛い下着を取り出した。それを持って階段を飛ぶように駆け下りると、トイレに入ってあそこをウォシュレットで念入りに洗ってから丁寧に拭き、新しい下着を身に着けて、汚れた下着を洗濯機の中に放り込んで手を洗った。
 ここまで52秒。
 それから階段を下りた時と同じくらいの速さ(と思ってるのは本人だけで、実際には「トロい」由香がそこまで敏捷であるはずもなく)で駆け上って部屋に入ると、慌てて窓を開けてスプレー式の消臭剤をベッドや枕やクッションやカーペットにたっぷり吹いて、粘着テープ式のゴミ取りで手早くカーペットを掃除する。
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2009年05月24日

第4章「トモダチ」

■■【4】■■
 指についた水っぽい愛液をティッシュで拭き、ぐっしょり濡れてしまった下着を替える。ひとりえっちし過ぎるとあそこが黒くなるとか、頭が悪くなるとか色々噂されてるけど、自分が馬鹿な女だって事は本当の事だと思う。始まってもいない恋に破れて、一人悶々と自分を慰めているなんていうのは、馬鹿のする事だからだ。
『ママ……早く帰ってこないかな……』
 婦人会の集まりとかで、午前中から出かけている母を思った。一人で家にいると、余計な事を考えてしまってどんどん暗くなってしまう。それならばどこかに出掛ければいいのだろうけど、もし圭介や健司と顔を合わせたりしたら、いったいどんな顔をしたらいいのかわからなくて、どこにも出掛けられなかった。
「…………晩御飯の用意でもしようかな…………」
 そう一人ごちる。
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2009年05月23日

第4章「トモダチ」

■■【3】■■
 指が動く。
 自分の意志とは無関係に。

 ぬるぬる。

 指に絡みつく、ねっとりしたもの。

 自分の中から出てきたもの。

 それをすくい、ぬりつけ、そしてこする。
 ゆっくり。
 時間をかけて。
 はやく。
 火がでるくらい。
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2009年05月22日

第4章「トモダチ」

■■【2】■■
 神社を出ると、圭介の足は、自然と幼馴染みの家への道筋を辿っていた。なぜか、無性に健司の、あののん気で牧歌的な顔が見たかったのだ。見れば安心出来る気がした。きっと元気になれる気がした。
 そう思った。

「ちょっと待っててね?今呼んでくるから」
 バストよりウエストの方が豊かで、洋画とかでよく見る酒樽みたいな体型の健司の母は、息子から話を聞いているとかで「大変ねぇ」とか「もう大丈夫?」とか「困ったことがあったらいつでも言ってね?」とか「なんでも力になるからね」とか、気が良くてちょっとおせっかい焼きな気質そのままの笑顔に、わずかな困惑を貼り付け、圭介を迎えてくれた。
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2009年05月20日

第4章「トモダチ」

■■【1】■■
 次の日は日曜日だった。
 ここ数日、ずっとテレビを見ていたのにも関わらず、それを忘れていた事に圭介は気付き、自分が画面を見ていながら実はまったく何も見ていなかった事を知って、
 笑った。
 久しぶりの笑みだった。心の中にどんよりと溜まっていた澱(おり)のようなものが、笑いと共に口からこぼれ出て霧散していくような気がして、身体に入っていた力が“すうっ”と抜けた。
 笑いを人の気持ちを軽くする。
 それを痛感した。続きを読む

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