■感想など■

2009年08月04日

第14章「君は俺が護るから」

■■【7】■■
 今日は朝から天気が良かった。
 だから忘れていたのだけれど、まだこの地方は梅雨明け宣言されていないはずだった。湿気は高くて風も生暖かいし、天気も不安定ですぐに崩れてしまう。初夏というには爽やかさに欠けるけれど、まだまだ夏本番というには何かが足りないのだ。とはいえ、早生まれの蝉の声もちらほらと聞こえてきているし、休日の今日は、きっと市営プールもいっぱいに違いない。
 7月9日は、そんな感じの日だった。

 夏休みは来週の水曜日の19日からで、終業式のある18日まで、まだ一週間もある。
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2009年08月03日

第14章「君は俺が護るから」

■■【6】■■
 3人で一緒に映画を見て、適当に話をして、それで気まずさが取れたら、そしたらタイミングを見計らって健司と2人きりにしてくれるものだとばかり、思っていた。
「はぁ……」
 溜息しか出ない。
「ホントに言う…………のかぁ……?」
 桂は公園のベンチに座って目の前の噴水を眺めながら、昨日の事を思い出していた。


「ボ……ボクに健司と2人っきりで逢えってゆーのか!?」
「当たり前じゃない」
 由香は、いとし子を見つめる慈母にも、魂を差し出す堕落者を見つめる悪魔にも見える、微妙にこわい微笑みを浮かべながら、キッパリと桂の抗議を切り捨てる。

 ハッキリ言って、これっぽっちも容赦無かった。

 桂にしてみれば、どこか裏切られたような気分だ。
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2009年08月02日

第14章「君は俺が護るから」

■■【5】■■
 ……とは言うものの、気持ちの上では一応スッキリとしたカタチに落ち着いたけれど、体調の方はそうもいかなかった。

 「生理は病気ではない」のだけれど、その痛みと体の熱っぽさ、だるさ、重たい感じは、気分を容易に陰鬱にさせる。昨日、あんな事をしたというのに、健司からは何の音沙汰も無い……というのも、桂の心を再び出口の無い迷宮に追いやる一因となっていた。

 今日が土曜日で学校が休みだったのは、果たして桂にとっては良かったのか悪かったのか。
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2009年08月01日

第14章「君は俺が護るから」

■■【4】■■
 目を真っ赤にして教室に帰った桂は、クラスの女子に色々聞かれたけれど、話すとちょっと面倒な事になりそうだったので「風で砂埃が目に入った」とかなんとか、適当な理由を告げて早々に退散した。
 楡崎に会った事とか、彼に言われた事とか、もし女子に話したら、そのままA組に直談判しそうなイキオイだったからだ。
 「あたしたちのけーちゃんに!」というキモチから……らしいけれども、別に何かひどいことをされたわけでもないので、逆にそういう過保護気味な事をされると恥ずかしいだけなのだ。
 とかく女子は多数で物事を推し進めようとするきらいがあり、そういうところは、桂もまだ馴染めなかったし、馴染もうとも思わなかった。数に物を言わせて自分の意見を通すだなんて、そういうのは弱虫のする事で、少なくとも桂は、自分で自分の事を弱虫だと認める気は無かったからだ。
 ……そりゃあ、確かに少し涙もろくは……なったけれど。

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2009年07月31日

第14章「君は俺が護るから」

■■【3】■■
 次の日は、七夕だった。

 7月5日から7日の3日間は、どういうわけか学食で「笹団子」が出る。
 七夕に笹団子を食べる風習は、この町には無い。聞けば、学食のおばちゃんの郷里の風習なのだという。
 大人の都合がどうあれ、学校で美味いものが食べられるというのは生徒達にとっては福音であり、最終日となった今日の学食は、いつにも増してなかなかに繁盛していた。
 そして、初日の5日から笹団子を受け取る時には一緒に小さな短冊も渡されて、それに願い事を記入して学食の出入り口に置かれている投票箱に入れておくと、今日の放課後には正面玄関横の両柱に裏山から採ってきた笹にくくりつけられて飾られる寸法……という、高校にしてはひどく子供っぽくもロマンチックな行事も、毎年行われている。
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2009年07月30日

第14章「君は俺が護るから」

■■【2】■■
 桂の、7月6日の朝は、久しぶりの“あの”感覚から始まった。

 ベッドからのろのろと起き上がると、朝日が射し込む明るい部屋の中で、気まずい想いをしながら“ぶるるっ”と全身を震わせた。
「あ〜……」
 思わず声が漏れる。
 彼女は、しばらく見ていなかったあの淫夢を、久しぶりに見てしまったのだ。
 しかも、前に見た淫夢と、非常に良く似ていた気がする。
 たった一つ違うところといえば、相手の顔がハッキリと見えたことだ。

 知っている顔だった。

 知り過ぎるほど知っている顔だった。
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2009年07月29日

第14章「君は俺が護るから」

■■【1】■■

 けーちゃんは、可愛い。

 たぶんこれは、今日、彼女の水着姿を見た全ての男子が抱いた共通の認識じゃないかな? と健司は思う。
 もともと、成長しきらない少年の中性を色濃く残した――良く言えば『幼い』、悪く言えば『女みたいな』――顔付きだった幼馴染みは、『女性仮性半陰陽』だという、とてもとても珍しい病気だということが判明して『女の子』になってから、本当に……どんどん可愛くなっていった。
 真黒な髪なんてさらさらのツヤツヤで、顔も手もちっちゃくって可愛くて、ぎゅっと抱いたりなんかしたら折れてしまいそうで、なのにおっぱいだけ何かの冗談みたいに“ぼいーん”とでっかくて、それこそ、そんじょそこらの巨乳アイドルなんて束になっても敵わないほど可愛らしい。それは、まっすぐに人を見つめてくる、綺麗な瞳に宿った『命の力』があるからなのだろう……とも思う。
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