■感想など■

2012年09月23日

[THEM]『Piece.09』「オリジナルザックラBL風味」

 黒髪の、比較的体のがっちりとした青年が、今にも死にそうな顔でふらふらと歩いて来た時、彼は、少し遅い昼食を慌てて掻き込むのに夢中であった。
 午後の訓練にはまだ間があるのだが、以前訓練中にみっともなく吐き戻した経験を持つ、この金髪の少年は、少しでも早く消化しようと、それだけを考えていたのである。
 だから、宿舎のリビングルームのテーブルに、じっと視線を注ぐ彼に気付いたのは、テーブルの上に広げたピッツァが、あと2ピースを残すのみとなった頃であった。
「…………なに?」
 おあずけを食らった犬よろしく、少年の座る背もたれに両手を置いて、ぐび……と唾を飲み込む青年に、少年は、氷よりも冷たい視線を向ける。
「食わせろ」
「やだ」

 ……即答だった。

 一呼吸も置かない少年の言葉に、青年の心がふかぁく傷つく。
「食わせろってば」
 それでも彼は、にっこりと笑って、彼の肩に「親しみを込めて」手を回した。
「やだよ」
 あくまで冷静に、何でもないかのように拒否の言葉を口にする少年に、青年のこめかみがぴくぴくと震えた。
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2012年09月16日

[THEM]『Piece.08』「夜の露天風呂で星空を」〜強くて弱いあなたへ〜

 冷気が、しんしんと肌に染みてくる。
 空気は澄んで、空には満天の星々が煌(きらめ)いていた。視線を上げれば、薄蒼い空をダガー(小刀)で切り取ったような、漆黒のシルエットがなだらかな稜線を描いて鎮座している。
 湯煙に霞む岩肌は、ごつごつとしたシルエットでありながら表面はすっかり角が取れ、肌を傷つける事は無い。そして所々に茶色い苔(こけ)がこびりつき、この宿の刻んだ年月を感じさせている。

 来て良かった……と、エアリスは思う。
 しみじみと、そう思う。
 身を沈めた湯面には、落ち葉が浮かんでいた。それを摘んで、エアリスは“ぺいっ”と湯船の外に捨てる。落ち葉が沈んでいようが虫が浮かんでいようが、露天風呂に入る以上はそんなのはとっくに承知しているので、いまさら気にしてなどいられないが、目の前に浮かんでいればやっぱり気になってしまうものだ。
「うわぁ……なんかすごいね……」
 感嘆したような声に振り返れば、涼風にたゆたうような湯気の向こうに、白いシルエットが浮かんでいた。
「私、露天の岩風呂って初めてかも」
 健康的な色の肌に白いバスタオルを巻き、綺麗……というより、どこか子供っぽさを残した可愛らしい女性が立っていた。バスタオルの、胸元と腰の前の部分を手で抑え、歩く時に裾が捲れないように気をつけているようだ。
 ぴったりと巻きついたバスタオルにメリハリのある体の線が浮き立って、その“どかん”とした“すげぇ”バディを際立たせている。隠しても隠しようが無いほど豊かな胸が、バスタオルで左右から押さえ込まれて、胸の谷間をアイシクルエリアのクレバス(氷裂)のように深く見せていた。
「遅いよティファ。何してたの?」
「仕方ないでしょ? 髪が多いんだもん」
 ちょっと唇を突き出し、綺麗な形の眉を“きゅっ”と寄せてみせたティファは、お尻まであった艶やかな黒髪をアップにしていて、確かに少し重たそうだった。
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2012年09月09日

[THEM]『Piece.07』「いつまでも、いつまでも」〜あなたがだいすき〜

■■【2】■■

『クラウドと買物? どういうこと?』
 いつどこで、そんな話になったのだろう。
「クラウドと買物って……」
「え? じゃんけんで勝った方がクラウドと二人っきりで買物するって……」
「…………」
「あれ? 言わなかった?」
「いっ……言ってない!! ぜっっったい言ってないっ!!」
 しれっと言うエアリスに、ティファは思わず声を上げた。
 何度も言うが、自分が言ったつもりになってどんどん話を進めてしまうのは、エアリスの悪い癖だ。
 これはもう、絶対に直してもらわなければ!……と、ティファは強く強く思った。
 しかも今回は、誰がどうみても確信的だ。
 間違い無い。今晩のディナーの後に出る、デザートをかけたっていい。確か大好きなフルーツゼリーだった気がするが、それでもいい。
「でも……もうじゃんけんで決まっちゃったし……」
「そ、そ、それってずるいっ!」
「ずるい?」
「ずるいずるいっ」
「ずるいかなぁ?」
「そうだよ。だって最初に聞いてれば私だって……」
「私だって?」
「私だってちゃんと……」
「ちゃんと?」
「クラ…………」
 両手を握ってぶんぶんと子供みたいに振っていたティファは、目の前のくるくる巻き毛のおねーさんがいつの間にか瞳にいぢわるな笑みを浮かべているのを見て、思わず言いかけた言葉を飲み込んだ。
 気付いてしまったのだ。
 エアリスの思惑に。
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2012年09月02日

[THEM]『Piece.07』「いつまでも、いつまでも」〜あなたがだいすき〜

■■【1】■■


 イヤな予感が、した。

 栗色くるくる巻き毛の“おねーさん”が、満面の笑みを浮かべてウキウキとやってくる……なんてのは、ベヒーモスが生息する密林で5メートル先も見えない霧が突然立ち込めてくるくらい、イヤな予感がビンビンとするものなのだ。
 彼女……ティファ=ロックハートにとって。
「ぬふふー」
 案の定、栗毛の彼女は、口元をふにふにと動かしながら後手に木のドアを閉じ、ヘンな笑いを漏らしていた。ティファは手にしていた本から顔を上げて、いきなりその笑顔と正面から遭遇し、どどっ……と疲れが全身を襲うのを感じる。

 “彼女”は、何か嬉しい事、楽しい事、初めて知った事、きれいなもの、可愛いものなどを見ると、それを誰かに教えたくてどうにも我慢出来ないくらい“うずうず”するらしい。そしてその対象は、なぜかいつも決まってティファだった。
 バレットもシドもヴィンもユフィも、そんな様子のエアリスを見るとさりげなく逃げてしまうし、ケットは宿に泊まると急に動作が止まってウンともスンとも言わなくなるし、クラウドに至っては何を言っても何を見せても「ああ」とか「そうか」とか「良かったな」とかしか言わないので、それはある意味必然だとも言えた。唯一、レッドXIIIは何でも興味深そうに聞いてくれたのだが、聞いてくれるだけで「それについてどう思ったか」なんて感想はちっとも出てこないので、対象からは早々に外れてしまったらしい。

「……今度はなに? エアリス……」
 とりあえず、聞いてみる。
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2012年08月26日

[THEM]『Piece.06』「ミッションX」〜孤軍奮闘〜

「やっぱり人形とかがいいんじゃねーか?」
 機械油の染み込んだフライトジャケットをハンガーにかけながら、不精髭に覆われた顎をざらりと撫でて艇長は言った。
「いや、もうすぐ学校じゃないですか。カバンとか新しいノートとか、そういう役に立つものの方が良くないですかね?」
 仕立ての良いダークブラウンのスーツを着込んだ紳士が、ニブル産の紅茶の香りを楽しみながら思慮深く言う。
「新しいフライパンが欲しいって、前に聞いたことがあるぞ?」
 いかつい顔の巨漢は、褐色の隻腕でビールの空缶を握り潰してぼんやりとつぶやいた。
「心がこもってさえいれば何でもいいと私は思うが……」
 そこらの女性よりも遥かに綺麗な長い黒髪を揺らして、普段は寡黙な美丈夫が誰ともなしに口にする。
「そういうのオイラわかんないけど、オイラだったら新鮮な野ウサギがいいなぁ」
 眠そうにカーペットの上でまどろんでいた隻眼の獣が、ふあっと大きな欠伸をしてから言った。
『いや、それはダメだろう』
 4人の男は心の中でほぼ同時に溜息する。
 問題は山積で、道のりは険しく困難だった。

 タイムリミットまでもう2日も無い。
 2日目の夜には作戦は決行され、そしてそのミッションは完璧に行われなければならなかった。失敗すればたちまちのうちに信頼を失い、そしてそれは築き上げた友好関係を瓦解させ権威の失墜さえも招きかねない。それだけはここにいる勇者達全員にとってどうしても避けたい事態だった。
 たとえそれが、どんなに絶望と困難に満ちた、危険極まりないミッションだったとしても。
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2012年08月19日

[THEM]『Piece.05』「ふたりあそび」〜彼女にはナイショ〜

■■【2】■■

 ユフィの両手で揉み上げられ、ティファはうっとりとした表情を浮かべ始めていた。
「気持ち良いの……?」
 ユフィがそう聞くと、彼女は無言でこくりと頷く。
 身を、任せていた。
『かわいい……』
 ユフィは不意にそう思った。
 思ってから、その自分の心の動きに戸惑いを感じた。
 ティファを可愛いと感じるなんて、初めてかもしれない。
 彼女はいつも強くて、嫌味なくらいカッコよくて勇ましくて、エアリスとはまた違った『おねーさん』だった。
 そのティファを、今、自分が気持ち良くしてる。

 自由にしてる。

 胸がどきどきした。
『なんだよ!? アタシはレズビアンなんかじゃないぞ!?』
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2012年08月12日

[THEM]『Piece.05』「ふたりあそび」〜彼女にはナイショ〜

■■【1】■■


 夕闇が街を包み始めていた。

 先行した彼等は、もう村に着いただろうか?
 斥候を兼ねて、クラウドとバレット、それにエアリスの3人が半日ほど離れた隣村まで向かったのは、今日の昼頃の事だ。
 30分ほど前にPHSで連絡が入った時は、山陰で薄暗くなり、あと1時間以内に到着しない場合はキャンプすると言っていた。
 この地方には地図にも載っていない村が点在し、しかもその距離は住人の感覚で『半日』とか『昼飯まで』とか、そんな曖昧な表現でしか計る事が出来ない。
 今更ながら、ガイドでも雇えば良かったと思う。
「私も……」
 ついそう口にしてしまってから、濡れたように艶やかな黒髪の女性は慌てて口をつぐみ、周りをきょろきょろと見まわした。
『私もついていけば良かった』
 そう言いかけてしまったのだ。
 だが、心配そうな様子を生意気で皮肉屋の忍者娘にさんざんからかわれた後では、その言葉を素直に口にするのは、ひどく躊躇(ためら)われたのだった。
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2012年08月05日

[THEM]『Piece.04』「あなたをさがしてる」〜見つけたい真実〜

■■【2】■■

 “彼”は、彼女が初めて好きになった男性(ひと)だった。
 はっきりとした出会いがいつだったか、それはもう定かではない。
 16歳で、普通と比べても遥かに遅い初潮を迎え、それからほどなく、身辺を今までよりもずっと大胆に黒服の男達が徘徊し始めた頃だったとは、思う。

 神羅の、生化学研究室別室ジェノバプロジェクト推進チーム第三セクタ担当者の意向によって、彼女はその生育の一切を監視されて育った。
 命を賭して彼女を逃がした母の甲斐無く、その行動の全ては神羅によって把握されていたのだ。
 彼女が十分に成長し、成熟した卵子の摘出とこれから数限りなく行われるだろう実験に耐えうる体力を得るまでが、彼女に残された“自由な”時間だった。

 身の回りに男性は多かったが、親しくなった事はあってもそれが恋になる事は無かった。
 彼等は決まって、日を置かずに彼女を避けるようになるからだ。
 彼女に欠点があるわけではない。
 むしろ美点ばかりが目についた。
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2012年07月29日

[THEM]『Piece.04』「あなたをさがしてる」〜見つけたい真実〜

■■【1】■■


 朝起きて部屋の外のトイレに行こうとした時、お腹が“しくしく”っとした。

 “重い”までいかなくて、なんとなく体の中にどんよりとしたものが溜まってる感じ。
 いつものあの感じだ。
 近い。
 あと1〜2日といったところだ。
 予定通りとはいえ、正直、またか、と思った。
 プラ・スティック(硬化樹脂材)のプレートがついたドアを開け、トイレに入る。
 蓋を上げて、下着を下ろして少しひやっとする木製の便座に座る。
 それだけでなんとなく気分までダウンしてくる。

“神様は……どうしてこんなものを女にだけお与えになったのだろう……?”

 それが“苦行”などではなく、むしろ女性にだけに与えられた“特権”なのだと思えるまで、彼女は、どうしてもそう思わずにはいられなかった。
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2012年07月22日

[THEM]『Piece.03』「猫」〜う・ふ・ふ〜

 “それ”は嵐のようにやってきた。

 廊下から、『ズタダカダカダカダカダカダカッ』とマシンガンのような音と振動が聞こえてきてから、すぐの事だった。
 4人部屋のベッドの上で本を読みながら“うとうと”とまどろんでいたティファは、咄嗟に反応する事が出来ずに、バタン! と壊れそうな音を立ててドアが開いた時にも、ベッドを下りる事すら出来なかった。
 そこに、飛んで来た。
 清々しい笑顔だった。
 どこか、壊れていた。

 ……容赦無いボディアタックだった。

「ティファーーーーーーーーー!!!」
「んなーーーーーっ!????」
 ぼすん!と柔らかい体が降ってきた。
 ふにゃふにゃのへにゃへにゃな、締まりなくゆるんだ口元で満面の笑みを浮かべながら。
 いつも後で縛ってリボンで飾られている“くるくる巻き毛”の栗色の髪は、ゆるくウェーブを描きながらふわりと広がっていた。
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2011年10月30日

[THEM]『Piece.02』「悔恨の女達へ」〜心を強くしなやかに〜

■■【1】■■


 ユフィが何も言わず、ティファの背後から彼女を抱きしめた。

 体が小刻みに震えている。
 いつもは強気で何者にも負けない忍者の子孫が、今は己の小ささ、弱さをまざまざと思い知って心細さに誰かにすがりたいと強く願っていた。
 震えは、体の奥から湧き上がるものだ。
 下腹の奥から脊髄を揺さぶり、それは首の後の産毛の一本一本さえも逆立たせる。
 ショートカットの、野鹿のようにしなやかな体躯の少女は、両腕の中のあたたかな温もりに、ただ全身を預けていた。
「ユフィ……?」
 おずおずとティファがユフィを肩越しに振り返る。
 が、ユフィはおでこをティファの艶やかな黒髪に押しつけたまま、ふるふると首を振って顔を見せる事を拒否した。ティファはそっと溜息をつき、それでも胴に回されたユフィの思いの他華奢な両腕に手の平を重ねる。そして、2回だけぽんぽんと叩くと、出来るだけ優しい声で話しかけた。
「ね、お茶……しようか?」
 それでもユフィは、ふるふると首を振る。
 今は何もいらない。
 ただこうしていたい。
 ティファはそれだけで、少女が受けた心の傷が思ったよりも深い事にようやく気付いたのだった。


 エアリスの背中には、引き攣れたような赤い線がくっきりと残っていた。
 魔法で自己治癒力が促進された傷痕(きずあと)は今はもうすっかり塞がれ、新たな肉が萌芽したその部分は、つやつやとした赤ん坊の皮膚のようなピンク色をしている。そのピンクの部分が、背中を見せている羞恥によって血流が活発になり、赤く見えいるのだった。
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2011年10月26日

[THEM]『Piece.01』「ナイショだよ?」〜あなただから〜

■■【2】■■

「もう……何するのよぅ……」
 起き上がろうとしたティファをエアリスの白くて細い腕が抑え込んだ。跳ね除けようとすれば簡単に跳ね除けられる弱い力なのに、ティファは簡単に抑え込まれて草原に仰向けに転がってしまった。

 万事休す。

 だった。
「ふふふ」
「なに? 悪ふざけしないで。急がないと」
「急がないと?」
「……バレット達が、待ってるから……」
「バレット達? クラウドが、デショ?」
「エアリス!」
「違う?」
「…………同じじゃない」
「同じじゃないよ?『バレット達』は複数形。だけど、ひとりだもん、『クラウド』は」
「何が言いたいの?」
「ふふ」
 エアリスはいぶかるティファをそのままにして、ごろん……と“でんぐりがえし”で自分も草原に寝転んだ。
 ティファの顔のすぐ横に、さかさまにエアリスの顔があった。
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2011年10月25日

[THEM]『Piece.01』「ナイショだよ?」〜あなただから〜

■■【1】■■


「ナイショだよ?」
 そう言って、彼女はちょっと悪戯っぽく微笑みながら世界の真実を教えてくれた。

 ……気がした。


 名も無い草原だった。
 空はどこまでも高く、青く、雲はその青を切り抜いたかのようにぽっかりと浮かんでいる。踝(くるぶし)までも無い背の低い草は、渡る風にゆるやかにその身を委ねて、草原を小波の遊ぶ大海のように見せていた。
 陽光はさんさんと降り注いでいる。
 だが湿度は低く、涼しい風は服の中まで偲び込んで、熱を持った体を優しく愛撫するようにしてなだめてくれる。
「きゃはぁっ!」
 突然駆け出した栗色の髪の女性が“ばたん……”と、駆け出した時と同じくらい唐突に倒れると、驚いたティファはもう少しで隣に座るレッドXIIIの鬣(たてがみ)をぎゅっと掴みそうになってしまった。
 彼女の“奇行”は今に始まったことではないが、それにはやはり時と場合を考えてほしいものだ……と、ティファは思う。
 モンスターをやっとの思いで撃退して、必死にその生息圏から距離を置いたばかりなのだ。
 闘いの間に何かとんでもない怪我でも負ってしまったんじゃないか?
 モンスターの毒が今になって彼女の体を蝕んでしまったんじゃないか?
 ティファやレッドXIIIがそんな風に考えてしまうかもしれない……と、どうして思わないんだろう?
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2011年02月01日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【10】■■

「え? ウソ? やだ……やめようよぉ……そんな冗談……」
「冗談……だと思う?」
「……やだ……本気? わ、私は女よ?」
「そうだよ」
「あ、貴女達も女なのよ?」
「そうね」
「……ちょ……ね、ねえ、落ちついて、落ちついて考えましょ? ね?」
「落ちついてるよ。落ちついてないのはティファだけ」
 エアリスの白くて柔らかい右手が、ティファの肩をやんわりと包んだ。
「……だ……ダメッ!……そんな……いや……ね? 冗談でしょ? 冗談よね?」
「大丈夫。冗談かどうかはすぐにわかるから」
 ユフィの顔が、ティファの火照った頬にキスしそうなくらいぐぐぐ……と寄った。
「うそ……や……やだやだやだやだやだやだ!!!」
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2011年01月31日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【9】■■

「な、なによ〜」
 それでも虚勢を張って上目使いに二人を見上げるティファに、
「エアリス姐さん? このヒト、こんな事言ってますけど」
「ふふふー……そうねぇ……正直じゃない子には御仕置きが必要よねぇ〜……」
 エアリスがゆっくりとトレイを横に追いやる。
 ユフィがぺろりと可愛らしいピンクの舌で唇を嘗めた。
「え? え? なに?」
 ティファはそう言いながらもすでにクッションを抱えて、犬に睨まれた子猫のように、じりじりとお尻の方から戦略的撤退をしていた。
 形勢は圧倒的に不利だ。
 ここは勇気を持って戦略的撤退をすべきではないか!?
「ちょっ! またっ!? きゃっ! あっ! やっ!」
 ……しかし、全ては遅過ぎた。
 退路を絶たれ、2人がかりで飛びかかられてくすぐられ、ティファは逃げることも出来ずに息も絶え絶えになりながら床の上をバタバタと転がる。
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2011年01月30日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【8】■■

「ウータイに住むユフィや、ミッドガルで育ったエアリスは、ひょっとしたらそう思うかもね。だって、虫を使った料理だってあるもの」
「ム……ムシ!? 昆虫!? マジ!?」
「やだ、そんなに驚かないでよ。虫だってあの村じゃあ大事なタンパク源だったんだから」
 タンパク源。
 そう言いきってしまうティファを、ユフィは何とも言えない表情で見た。
「……う〜アタシ、ティファ見る目が変わっちゃいそう……」
「何言ってるのよ。ウータイだって、あの、海の、うねうねぐにぐにしたもの食べるじゃない」
「え〜〜〜? そんなの食べ……………………タコ?」
「そう」
 エアリスは二人の会話を聞きながら、ユフィの生まれ故郷のウータイに寄った時、御馳走に出された料理の中にあった「海棲軟体動物」の事を言っているのだ、と気付いた。
 料理前の状態をわざわざユフィに見せてもらった時、そのあまりの醜悪さに「食べる前になんか見なければ良かった!」と心の底から後悔したものだ。
「だって美味しいじゃん。……………………あ」
「でしょ?」
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2011年01月28日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【7】■■

「でもティファってすごいなぁ……何でも作れちゃうんだなぁ……」
 ユフィが水色のクッションを抱えて体をゆらゆらと揺らしながらそう言うと、ティファはカップを置いて両手の指を絡ませた。
「何でもってワケじゃないわよ。まだまだ作れないものの方が多いくらいだもの」
「そう言えるだけですごいってーの。アタシなんか食べるの専門だもん」
「……小さい頃の反動かもしれないなぁ……」
「反動? 何の?」
 エアリスが首を傾げてティファを見た。無垢な瞳で見つめられると、まるでちっちゃな女の子に質問されているようで、心の片隅が少しむず痒い。
「…………なんでもない……」
「なによ。そこまで言っといてやめちゃうわけ?」
「……だって……」
「だってなによ? 気もたせといていざとなったら逃げるのは良くないよ?」
 ユフィは、怒ってるんだか笑っているんだかわからない顔でティファを睨んだ。
 間違いない。
 彼女は完全に楽しんでいる。
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2011年01月27日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【6】■■

 さすがにスケスケネグリジェのままでは恥ずかしくて、ティファは薄いショールを羽織る事だけは“許して”もらった。
 それでも胸の“先っちょ”が透けて見えてしまうというのは、同性の前だといってもものすごく恥ずかしい。風呂などで一緒に入っても特に意識する事無く平気になっていたが、こうして明るい部屋の中に身を置くとなると話は別だ。
 何より、すーすーとして心許(こころもと)無いことこの上ない。
「あ、アタシ砂糖3つね」
「3つも入れるの? 太っても知らないから」
「そんなこと言うんだったら、そもそも寝る前に焼き菓子なんて齧(かじ)れないって」
 エアリスの呆れたような言葉にそう切り返して、ユフィはティファの焼いた焼き菓子をポリポリと齧る。
 ティファは、まるで仲の良い姉妹みたいな二人のやり取りを横目に、最後に自分の分のお茶をカップに注いで、ふかふかのクッションを抱え込んだ。
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2011年01月26日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【5】■■

「だいたい、無自覚過ぎるんだよ。ティファは」
「……別に……そういうわけじゃ……ないけど……」
 のろのろと起き上がって胸元を両手で隠しながらベッドに座ると、ティファは乱れた髪を右手でかきあげながらユフィに答えた。
「んん? なに? じゃあ自意識はあるんだ。『ワタシって綺麗!』って!!」
「ち、違う違う! だいたい、ユフィだってエアリスだって、私の胸が見たいだけでしょ? わかってるんだから!」
「およ? なんで?」
「……だって……ミッドガルのスラムにいた時に、館の姐さん達が」
「館?」
「姐さん?」
「ん…………その……娼婦館の、姐さん」
 ティファがぽしょぽしょとそう言うと、エアリスとユフィの笑顔がたちまちのうちに、なんとなくぎこちないものへと変わった。
 部屋の空気までごっそり入れ替わってしまったようだ。
「……あ〜………………」
「………………へえ……」
 曖昧(あいまい)な相槌(あいづち)は、2人の心の動揺を如実に表している。
 ティファは溜息を吐(つ)くと、ちょっと怖い顔を作って交互に二人の顔を睨みつけた。
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2011年01月24日

[THEM]『Piece.00』「楽宴」〜FRIENDS〜

■■【4】■■

「貴女、自分の立場がわかって? それなのに、ああもう……あんな無粋で野暮ったいパジャマなんて……! 貴女、今夜のこの集まりをなんだと思っていて!?」
 いつのまにかベッドの上に両足で踏ん張ってナイティのまま仁王立ちしている“くるくる巻き毛”のおねーさんを、ティファは呆然(ぼうぜん)と見上げた。
 上下に分かれたナイティからは、可愛いお臍が覗いている。
『……なにか悪いものでも食べたのだろうか?』
 本気でそう思った。
「…………エアリス……?」
「目の前にこんな……こんな……こんなナイスなバディがあるのに、それを大人しく見逃すなんて事が果たして出来ようか? いいやいられない!! カッコ反語カッコ閉じる!」
「…………ユ……ユフィ……???」
 芝居がかった口調で、ティファの実用一辺倒で飾り気の無いブラを握り締めながらぶるぶると震える少女の目は、とてつもなく本気の炎にメラメラと燃えていた。

 ……襲われるかと思った。

「ティファ、いい? よく聞いて」
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